第1回フォーラム

日時:平成12年12月15日(金)
場所:札幌市ボランティア研修センター 第1研修室
講師:橘 治国(たちばな はるくに)先生 (北海道大学大学院工学研究科)
内容:『茨戸川の自然環境と水質について』


○茨戸川の水環境について
 茨戸川は石狩川の三日月湖としてみると、全国的にも大きな湖沼となります。
 水質は都市排水流入の影響で清澄とは言えませんが、豊富な魚類や水生植物などの生物相、また魚類を狙う鳥類などで、すばらしい水環境が形成されています。また昔の石狩川の面影を偲ぶことができる貴重な水域です。

○茨戸川の部分ごとの呼び名
 茨戸川の蛇行部分は大きく3つ(上部湖盆、中部湖盆、下部湖盆)に分けられています。水質でみると、上部では都市排水より農業の影響が大きいが、中部は都市排水の影響がみられるようになり、ボート競技場付近ではかなり強くなる。下部では都市排水の他に海水の影響が加わる。一口に茨戸川の水質と言っても、湖盆の位置や、季節や天気によって様々です。総合的にみると茨戸湖の水質は、都市排水と周囲の泥炭地の滲出水で清澄とは言えません。


○アオコの異常発生について
 昔は水の表面が緑色で、手でどろっとすくい取れるくらいアオコが発生していましたが、今はそれほどではありません。それにはいろんな理由がありますが、まず海水の進入による藍藻類の減少があげられそうです。これには浚渫(茨戸川の底に溜まったヘドロをすくうこと)の影響が大きいといえます。また、一部の下水処理場で3次処理まで行うようになったことやヒシという植物が増えて、プランクトンの発生が押さえられた、などの原因が考えられます。


○環境基準値について
 昭和46年に河川の水質について環境基準値が定められましたが、茨戸川ではその基準を未だに達成できずにいます。札幌市や石狩市の下水処理場の排水が流入しているからです。今後とも環境基準の 守は難しいと言われています。しかし私達は茨戸川の都市排水受容という恩恵によって生活できるわけです。今後は、水環境の実態を理解し、望ましい環境になるように努力してゆかなければなりません。下水処理場における高度処理や周辺土地利用の工夫、さらに石狩川からの導水などが考えられます。


○漁業への影響について
 茨戸川は下水処理場のため富栄養化しており、湖水を海へ流すと魚のえさとなるプランクトンの増殖を促し、水揚げ量が増えると予想されます。だから、漁師さんからはもっと茨戸川の水を流して欲しい、という要望があるようです。(放水路は、大雨が降った時にしか開かない。)だから、海に対する栄養の供給源としての茨戸川、という見方もあるわけです。総合的に茨戸川の水環境を考え、茨戸川に美しい昔の石狩川の姿を残してゆけるように、努力する必要があります。



『茨戸川の水環境保全について』 
橘 治国 (北海道大学大学院工学研究科)

 
 和42年頃から、茨戸湖の水質汚濁について調査・研究を始めました。湖水は都市排水で汚れに汚れ、プランクトンが異常発生していました。都市排水の汚れが強すぎ、プランクトンが増殖できないときもありました。
 
 近の茨戸湖の環境は変わりつつあります。一つは、排水の下水処理による浄化、もう一つは市民のモラルの向上でしょう。ビニール袋、空き缶などの川への投げ捨てがかなり少なくなりました。人が代わり、環境が変化する・・・一区切りできる時代となってきました。

 の環境を取り戻し、将来に残しておきたい。市民が本来の自然に触れることができる場所として残しておきたい。自然の中のふっと人間を感じる場所として残しておきたい・・・というのが今の気持ちです。そこで私は、茨戸湖の現状を正しく説明し、今後の保全対策について検討していきたいと思っています。石狩川の昔の面影を残す水域、豊かな生態系を残す水域、市民の憩いの場、舟運の場、札幌市の排水安定化の場、石狩湾への栄養塩補給の場、こんな茨戸湖のあり方について考えてゆきたいと思います。

 戸湖の水質そのものは、ここ10年でそれほど変わったわけではありません。しかし上部湖盆の周辺は宅地や公園の開発で少しづつ変化し、中部下部湖盆の周辺も土地開発が進行し、水質への影響が心配されています。一方、下水道の整備や浚渫そして浚渫に伴う海水の上流域への混入等の効果によって、アオコの発生は調査を始めた昭和40年代ほどではありません。汚濁の程度は減ってきたように見えるけれど、周辺の土地の開発に伴って、水辺に都市化の雰囲気が漂い、生態系も均一化してきたように思われます。

 、私は市民の関心をこの茨戸湖に向けたい。そして環境が人工的なものになる前に、昔の石狩川を偲べ、豊かな生態系を観察でき、そしてその中で人間がくつろぐことのできる、そんな茨戸湖の環境にすることを訴えてゆきたい。しかし、茨戸湖の集水域は行政的に不安定なため、貴重な石狩川の遺産という認識なしに、それとなく姿を変え、ひょっとしたら消えてしまうような気がする。これほどのスケールで昔を偲べるところはない。公園化もよいけれど、できるだけ現状の自然を残しておきたい。また、先人の治水の苦労を偲べる場所もある。岡崎文吉の護岸ブロック、種牛を育成した場所、稲作やタマネギ畑、創成川につんがる舟運の場、これらがだんだん姿を消しつつある。都市近郊にあって、これほど豊かな自然環境を維持している水域は全国でも珍しい。元北大農学部教官の井上先生の魚類調査では、淡水、汽水、海水に棲息する多様な魚種が認められ、イシカリワカサギなどレッドマーク的な魚種も認められる。この魚を餌とする鳥類も豊富。アオサギを見ることができるし、時にはオジロワシも飛来する。ヨシ原は残り、近くの水辺では春になると多くの魚の産卵が見られる。珍しいミジンコの棲息することも報告されている。とにかく生物の宝庫である。人間の手を入れるとこの自然は壊れてしまう。一度、茨戸湖の湖面を見てください。網を持って岸をすくってみて下さい。たくさんの沼エビが入るはず。これで飲めば格別。姫菱も何か役に立つかもしれない。一面の菱の間に、たくさんの魚が。冬のワカサギ釣り。一人一人が欲張らなければ、この楽しみはいつも都市近郊の茨戸湖にある。

 戸湖は、市民の憩いの場所ばかりではない。水産業、そして農業用水として利用されている。漁師さんや農家の人々によって、茨戸湖が守られていると言ってもよい。多種多様な魚類は、漁師の生活を支え、良質な水は農業用水として利用されている。湖沼の環境は、その水で生活している人がいないとたちまち悪化してしまうだろう。我々は、茨戸湖を今後の優れた水環境として残すために、漁業としての水質をまず確保していく必要がある。漁師さんも、積極的に保全運動に関わって欲しい。また農業は、窒素過多でよいのだろうか。漁業農業から見た茨戸湖の環境についての話をお聞きしたい。

 戸湖の浄化対策として豊平川や石狩川からの導水、下水処理場の高度処理等があります。最近の土地利用や水質汚濁(富栄養化)を考えると、自然の石狩川のすばらしさを将来に残すためには何らかの行政的処置が必要と思われる。このままだと、いつの間にか水は汚れ、埋立地になってしまうのではないかと心配します。石狩川の自然、その景観を将来に残すべきです。

 近、花畔周辺での砒素問題が話題になりました。しかしこれは大昔からの問題です。健康面や漁業の被害報告されていないし、すぐ社会問題として取り上げるのはどうかと思う。けれどもこれからの環境保全のために基礎的な研究を行ってゆくことは必要でしょう。私も、過去からこの話は知っており分析もしていたので、反省を込めて勉強を再開したい。また茨戸湖の水は、泥炭地浸出水由来のフミン質を含み、また札幌市の排水の浄化施設の一面もあって水質からは多くの問題があります。

 観、生態系の保全とともに、水質についても見守ってゆく必要があるでしょう。

皆様の意見を活かせる内容の充実した市民フォーラムを目指しておりますので、
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