第2回フォーラム
日時:平成13年1月26日(金)
場所:ボランティア研修センター 第一研修室
講師:岡村 俊邦(おかむら としくに)先生 (北海道工業大学 工学部土木工学科)
内容:『河畔林の再生について』
川
の周りの森は河畔林と言いますが、もともとは自然に豊かな森がいっぱいありました。日本を含めどこの国でもそうなのですが、川から開発が始まり、洪水の時には洪水の流れの邪魔になります。色々な事で森は無くなりましたが、環境の面では森は非常にいい働きをしていることが昔からわかっていました。地球環境の問題が起きるようになって森を大事にしていかなければならなくなり、森が無くなった所はまた元に戻していかなければならなくなりました。作るといってもどのような森を作ればよいのか、どんな働きをしていたかということを良くわかった上で作らなければいけない。ただ植えていけば良いということにはなりません。
川
の河畔林の再生ということで、河畔林はどんな働きをしているのか又どんな方向で作っていったら良いのかということがあります。川の周りにある自然森には色々な生物が住んでいます。周りにたくさん木が生えていて、葉が水の中に落ち、それを水の中の昆虫が食べ、昆虫を魚が食べ、魚を動物が食べる。いわゆる食物連鎖、生態系があり自然が豊かになっています。川の周りにある森の働きの一つは、生態系を成り立たせていることです。川の曲がっている所は川の水で周りが削られているので、木の根元を削られて木が倒れ、倒れた木の下の根元は水の流れがゆっくりになる為、様々な虫や魚が住んでいます。水の中に色々な餌が流れてきて、それを魚が食べてはまた木の根元に戻る。魚にとっては、倒れた木の根元は非常に安全な住処なわけです。木は魚にも住みやすい場所を提供しています。このように生物に食べ物、住処を提供しているのです。
も
う一つ大切な事は、水との関係、雨が降った後の水の流れ方です。雨が降る前でも川には水が流れています。降ってしばらくすると川の水は急激に増え、雨が止むと減っていきます。急に増えるのは何故かというと、降った雨はほとんど山の地表面を流れて川の中に入るので、急に増えるわけです。雨が降っていないときには何故水が無くならないかというと、降った雨や雪が山の土の中に染み込み、土の中での移動速度というのは非常に遅いので、1ヶ月または1年かけて川に出てきます。基本的に雨と川の流れる水の関係はそうなっているわけです。雨と水の関係は広い所ではわかりにくいのですが、小さい島なら降ってくる雨の量と出て行く川の水の量が非常にはっきりしていますから、天売島と焼尻島を例にとってお話をしましょう。
天
売島と焼尻島は島の大きさ、起伏、高さが非常に似ています。天売島の方は殆ど森が無くなっています。島から海に出るところで水の量を計ってみました。雨の降っていない、かんかん照りの時は直接降った雨ではなくて、地面に染み込んでから出てくる水の量を計りました。たくさんの所から水が集まってくる所ですと、水は大量になります。水が集まってくる範囲を流域といいます。その隣の天売島ではかなり立派な森があります。こちらでも同じように調べました。焼尻島のオンコは有名なのですが、その外表面には色々な草が生えています。天売島では、夏場だとちょろちょろとしか水が流れていません。川に流れている水の量を計り、それを同じ面積に換算して、天売島と焼尻島を比較します。そうすると、天売島には殆ど水が流れていませんが、焼尻島には夏場の雨のない時でも流れている。これは東先生の説明の仕方ですが、土というのはスポンジみたいなもので、隙間だらけで乾くと隙間に空気が入るわけです。湿ると隙間にある程度水が入ります。乾いた部分にそこに雨が降ってくると染み込まないで表面を流れてしまいます。森がある土だと土の表面が湿った状態が保たれるので、雨が降るとすぐに水が染み込みます。ただし木を切ってしまって乾いた状態だと雨が染み込まないですぐ海に流れていってしまう。だから雨の降らない時に川の調査をすると、昔染み込んだ水が時間をかけてゆっくり出てきます。流量の平準化ということなのですが、雨が降ると急に増えて、降った後は一定量が流れます。森があると、降った直後に出る水の量は少なくなるし、降っていないときでもある程度は流れている。森が無いと、降ったときはたくさん水が流れ出て、降らないとカラカラになってしまう。流量を平準化することを証明するのは非常に難しくて、天売、焼尻島の例でもいろいろ問題はあります。
雨
が地面に染み込むと、1年くらいかけてゆっくり流れ、ミネラルウォーターという形になります。雨の水を分析した結果と、川の水を分析した結果を比較すると、雨の水はアンモニアイオンや窒素を含んでいます。これは排気ガスから上空で雨に溶け込んだものです。こういうものは川の水では少なく、逆にカルシウムなどが多いのです。雨や雪で汚い窒素分を含んだ蒸留水が土に浸透していく過程で、こういう窒素分が取り除かれて、地中の微量な元素が含まれる。その為には森があって、雨が染み込んでいくという作用が必要で、結果としてミネラルウォーターが作られるのです。
本
来、北海道の川の周りには木がたくさん生えていたわけですから、川の水はそんなに温度が上がらない状態で、ヤマベなどの川魚が冷たい水に適応しています。それをオープンにしてしまうと、直射日光で水温が上がります。北海道の魚は非常に棲みにくくなってしまうのです。河畔林があれば直射日光があたることもなく、急激な水温上昇を抑えてくれます。こういう川に本来の北海道の魚はいます。河畔林の働きをまとめると、川の生物に食べ物と住処を与えてくれる。川の水の量を安定化する。水質的にも良くして、水温があまり上がらないようにする。この為に、河畔林を作っていかなくてはならないわけですが、森にも色々な種類があり、北海道の森は秋には赤もあれば黄色、緑も見られます。色々な種類の木が入り混じっていると、色々な種類の昆虫がいます。川にも一定して昆虫が落ち、魚も一定して食料が得られます。こういう森を川の周りに作っていかなくてはなりません。
木
の根というのは、深く入っても縦には1m程度で、普通は50cmくらいしか入っていません。横方向に広がります。植えるときに横方向の根を掘り起こして持っていくのは至難の業ですから、どうしても切ってしまいます。先端が一番新しい根で、適応する力も強いのですが、先端を切ってしまうと、特に川の周りには何も無いわけですから、風が吹いて木は水が吸えなくなり、葉からはどんどん水分が失われて、乾燥して死んでしまいます。それではどうすれば良いかというと、4つの条件があります。1つは地域性といって、もともと札幌にあった種類を使うことです。外から持ってくると生物の種類は同じでも遺伝子レベルで見ると違います。ですから札幌で森を作る場合は札幌の周辺の種で作らなければなりません。2つめは、出来るだけたくさんの種類の木を植えたほうがいいということです。川の周りにはヤナギしか無いと思っている人もいますが、それは昔全部切ってしまってヤナギしか生えなくなってしまっただけです。色々な種類の木を植えると、色々な種類の昆虫がついて、生態系が豊かになります。 3つめは、河原に植える時にわざわざ黒土を持っていく人がいますが、そういうことはしない方がいいのです。河原の森は砂砂利で育つのが自然です。河原の砂利は養分が無いから、良い土を持っていって大事に育てようという発想ですが、そんなことはせず、色々な種類の種を植えてやります。そうするとそこに適したものが生き残ります。4つめは、ある程度は手助けをすることです。昔どういうふうに森が出来たのかを再現してやることが一番自然な方法です。本当は何もしなくても種が自然の森から飛んでくることが一番良いのですが、人間が森を壊してしまうと、ヤナギやドロノキしか生えなくなります。本来森には様々な種類の木があり、複雑な森が出来ているのです。
そ
こで、考えたのが生態学的混播法です。これは、ほうっておいても種が飛んではこない所に、人間が種を持ち込む方法です。直径3mの範囲で10種類くらいの種を植えます。そんな無駄なことを何故するかというと、色々な種類が競争しながら育つ中で、自然に任せる為です。実際に、「こういう森を作ろう」と思った時に、出来るだけ近い場所にある森から種を採取することが必要です。この方が、遺伝的にも育ちやすいのです。生態学的混播法は、直径9cmの小さいポットに入っていますから、子供でも十分出来ます。2年も経つと、直径3mのサークルの中に10種類の木が育ちます。3年目には1mくらい大きくなる木もあります。軽い種は先駆性といって、早く大きくなるものが多いです。5年経っても、25cm程度の木もあります。木を植える時に、栄養のある土は要りません。採石場の跡で、石の屑しかないような所に植えても、木はちゃんと育ちます。逆にこういう所に黒土を持ってくると、草が強くなり、木が死んでしまいます。最初からこういう所で木が小さいうちに慣らしていけば、お金をかけずに本格的に、自然に近い状態でやっていけるのです。
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